認知症を予防するには

認知症のリスクは生活習慣病により高まるということが分かってきました。生活習慣病はアミロイドβたんぱくが増加しやすくなったり、動脈硬化を進めて脳梗塞や脳出血を起こすリスクを高めるので脳血管障害による認知症の原因にもなります。また、糖尿病があるとアルツハイマー病になるリスクが2倍になると言われています。

 認知症を予防するためには、生活習慣病の予防と脳を使った運動がポイントとなります。食生活改善や適度な運動・禁煙などの生活習慣病の予防が、認知症の予防にもつながります。すでに生活習慣病がある場合は、薬によって治療を行い病気をコントロールすることが大切なのです。また、計算などの脳を使いながらウォーキングや有酸素運動を行うなど脳を使った運動が今注目されています。これは、脳の血流が増加して脳が活性化し、記憶力や判断力などの認知機能の低下が抑えられると考えられています。そして、人とのコミュニケーションにも認知予防の効果があります。

認知症を早期発見するには、まず物忘れテストと初期症状をチェックします。

 物忘れテストにおいては、関連性のない3つの言葉を覚えてもらい少し時間をおいてから思い出してもらうというやり方です。言葉は口頭だけで覚えてもらい、別のことに意識をそらしてから思い出してもらいます。このテストで5~10分後通常2つ正しくは答えることができます。1つしか出てこなかったり2つ目以降がヒントでも出て来なかった場合は、物忘れ(記憶障害)以外の認知症の初期症状も確認します。

 初期症状のチェックには、7項目あります。

  ①同じことを何回も話す・尋ねる。

  ②物の置忘れが増え、よく捜し物をする。

  ③以前は出来ていた料理や買い物に手間をかける。

  ④お金の管理が出来ない。

  ⑤ニュースなどの周りの出来事に関心がない。

  ⑥意欲がなく、趣味・活動をやめた。

  ⑦怒りっぽくなった・疑い深くなった

①と②は典型的な記憶障害の症状にあたります。また、③と④は実行機能障害という物事を順序立てて考えられない・実践できないという症状です。さらに、⑤と⑥は物事への興味ややる気がなくなるという意欲低下の症状です。⑦の症状は①~⑥の症状が影響することで疑い深くなることで現れる症状です。このチェックは、当てはまる項目が多いほど認知症の可能性が高くなると考えられています。誰でも年齢とともに認知症のリスクは高まるので、定期的なチェックが必要となります。

認知症の早期発見のために注意したい症状が2つあります。それは「取り繕い」と「幻視」です。

  アルツハイマー病のある人は、「時間のあるときは何をしていますか?」というような質問に対し、「特別なことはしていません」や「いつもと同じです」などというようなきちんと受け答えをしているようで答えに具体性がありません。このような取り繕いを繰り返す場合は、アルツハイマー病が疑われます。

  2つ目の「幻視」と呼ばれる症状はレビー小体型認知症の場合によく現れる症状です。実際にはいるはずのない人が見えたり、声が聞こえたりするので、一人で会話をするようなことがあるのです。このような「取り繕い」や「幻視」と呼ばれる症状が現れたときは、早い段階で認知症を疑って受診につなげていくことができます。

 認知症が疑われたら下図のような医療機関を受診することが大切です。医療機関への受診を勧める際には、本人が安心して受診できるように「たまには脳の健康診断を受けてみよう!」というように家族などが声掛けをすることも大切となります。

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