認知症の悪化を防ぐためには
飲み薬
認知症の中で特に薬の効果が期待できるものがあります。それは、アルツハイマー病です。アルツハイマー病の薬には、4種類あります。この4種類の薬の効果を大きく分けると2つです。
1つ目は意欲を向上させるという効果、2つ目は気持ちを穏やかにするという効果があります。
では、まず意欲を向上させる効果を持つ薬について紹介したいと思います。この効果を持つ薬の種類は全部で3つあります。ドネペジルとガランタミンという飲み薬、リバスチグミンという貼り薬の計3つです。2つの飲み薬は、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器症状や、脈拍が遅くなるなどの副作用が現れることがあります。一方、貼り薬は薬の成分が皮膚から吸収されるので、消化器症状などの副作用の頻度は少なくなります。
また、気持ちを穏やかにする薬にはメマンチンという飲み薬があります。この薬は、意欲を向上させる薬と併用することで怒りっぽくなるのを抑えることができます。メマンチンを使っていて、食欲不振、ふらつき、強い眠気などの副作用が現れてきたときには、薬を飲む時間帯を就寝前にするなどして変えたり、薬の量を調整するなどの対処をする必要があります。
回想法・芸術療法
薬の治療と同時に回想法や芸術療法といったものも認知症の悪化を防ぐのに効果があります。
回想法は、昔の写真・昔使った道具やおもちゃや若いころにはやった映画や歌番組などを見ることで家族やグループで思い出を語るという方法です。長い間、定着していた記憶は残っているので、子どものときや若いときに体験したことは会話がしやすいためにこの方法を用いることができます。
また、芸術療法は絵画や工作、懐かしい歌を歌ったり楽器を演奏するという方法です。これらの行為は体で覚える記憶であるため、長年やっていなくても以前に慣れ親しんだことであれば自然にできることが多いためです。この方法を実践するときには本人が親しめるテーマを選ぶことが大切なのです。
家事によるリハビリ
料理や掃除、洗濯などの家事もリハビリになります。家事には、高度な記憶力や複雑な判断力が必要になります。認知症の人にとって家事というのは簡単なことではありませんが家族が一緒に行いやり遂げることで、達成感や自信を得ることができます。そのため、認知症に対する良い効果が期待できるのです。
認知症の方と一緒に家事を行うことに対して4つのルールがあります。
1つ目は、1つ1つシンプルにお願いするということです。認知症の方は、視野的に認識できる範囲が普通の人の半分程度なので2つのことをお願いする際には、2つのものが視野に入っている必要もあります。
2つ目は、うまくいっていることを伝えるということです。上手くできているということを伝えることで、次の作業にスムーズに進めることができます。
3つ目は、さりげなく手伝うということです。手が止まっていて戸惑っているときには、次の作業を先回りしていいさりげなく手伝います。
4つ目は、感謝を伝えるということです。作業をやり終えた後に感謝の気持ちを言葉で伝え、自分が必要とされていると感じてもらうことで家事をする意欲を生み、次につなげることができます。
認知症の方との日常生活での接し方には、4つの基本があります。
1つ目は、ゆっくりやさしい言葉で話すということです。ゆっくり話すことで、認知症の方が話の内容を理解しやすくなります。
2つ目は、短く簡潔に話すということです。短く簡潔に話すことで理解しやすく、行動もしやすくなります。
3つ目は、先回りして伝えるということです。認知症の方は次にすることを忘れてしまうので、戸惑って不安感に襲われたり、自信を失ったりしてしまいます。先回りして伝えることで、次に何をするのかを知ることができます。
4つ目は、できないことを非難しないということです。認知症の方は、自分が失敗してしまうということ・できないことですでに傷ついているので、それを非難されるということでさらにダメージが大きくなってしまいます。そのため、できないことを寛容に受け止めてあげることが必要なのです。