サルコぺニアとは?
サルコぺニアとは、筋肉が急激に減ってしまう状態をいう。サルコぺニアになると、転倒・骨折など様々なリスクが増える。これまでは適切な診断基準がなかったが、昨年、アジアの診断基準がまとまった。
サルコぺニアは、加齢や生活習慣などの影響によって、筋肉が急激に減ってしまう状態である。一般的な老化による筋肉の減少とは異なる。
サルコぺニアとは、ギリシャ語を基にした造語である。1989年ごろにアメリカで提唱された比較的新しい病気の概念である。
・サルコぺニアの患者数の割合
サルコぺニアは、65歳以上の高齢者に多く、特に75歳以上になると急に増えていく。85~90歳では、男女ともサルコぺニアの割合が60~80%と半数を超える。
65歳以下の人でも、デスクワークや自動車に頼る生活習慣などによって、筋肉が著しく減っている場合がある。そのため、若い人の中にも、サルコぺニア予備軍がいて、注意が必要である。
・サルコぺニアの影響
サルコぺニアになると、歩く速度が低下する、転倒・骨折のリスクが増加する、日常生活の動作が困難になる、病気になりやすくなる、死亡率が上昇するなど、さまざまな影響が出てくる。
「日常生活の動作が困難になる」というのは、着替え、入浴などの日常的な行動がしづらくなるということである。「病気になりやすくなる」というのは、サルコぺニアになると運動量が減り、感染症や骨粗鬆症などの病気を引き起こしてしまいかねないということである。また、糖尿病になるリスクが高まり、他の病気を招くことになりかねない。
「死亡率の上昇」は感染症にかかりやすくなったり動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが上がることを意味する。
・サルコぺニアの診断基準 ―筋肉量と歩行速度、握力をチェックする―
以前は、サルコぺニアの診断基準は、欧米人のものしかなく、体格や生活習慣が異なる日本人にそのまま当てはめることはできなかった。そこで、2013年3月に、日本、韓国、中国、台湾、香港、タイ、マレーシアのサルコぺニア研究者による話し合いが始まり、2014年2月にアジア人のための診断基準がまとまった。
その診断基準となるのが、筋肉量と、歩行速度、握力を測定した数値である。
Ⅰ.筋肉量
弱い電流を全身に流すバイオエレクトリカルインピーダンスアナリシス(BIA)法という方法で測定する。1m²当たりの筋肉量が、男性は7.0kg未満、女性は5.7kg未満が低筋肉量となる。
Ⅱ.歩行速度
1秒間に歩ける距離が0.8m以下の場合に歩行速度低下となる。
青信号で横断歩道を渡り切れるか否かが目安である。
Ⅲ.握力
男性は26kg未満、女性は18kg未満で握力低下となる。
握力測定は、椅子に座った状態で背筋を伸ばし、肘を90度に曲げた姿勢で、専用の握力計を使って行う。立って測ると体重がかかり、実際の値より高く出ることがある。通常は、左右2回ずつ測定し最大の値で診断する。高齢者は体力的な問題があり、数値が安定しない。1回測るだけでも良い
これらの基準を基にして、サルコぺニアの診断が行われる。